共時性

                                 サンマーリン 伊藤

先日知人と居酒屋で飲んだ際、財布を店に置き忘れ、気付いて戻った時には無くなっていました。

身分証関係は入っていなかったのですが、クレジットカードやキャッシュカードなどのお金に関するカードは全て無くなりました。

財布に家の鍵が入っていたのでそれも失いました。

家の中に入れなくなりました。泥酔状態で。

すでに深夜であったため、誰かに頼る事も出来ませんでした。

しかたがないので近所の海辺で寝ることにしました。

護岸整備された海辺の冷たいコンクリートの上で横になり、朝になるのを待って不動産屋に家を開けてもらうことにしました。

南国の石垣島も、この時期の夜はかなり冷え込みます。泥酔状態とはいえ、とてもじゃないけど寒くて眠れません。

「焚火をするしかない!」

幸い好天が続いていたので、乾いた流木がすぐに集まりました。普段タバコを吸うのでライターは持っていました。

しかし木というものはそう簡単に燃え上がるものではなく、焚きつけになる燃えやすい物がないとなかなか火がおきません。紙とか木くず、細い枝や枯れ葉などがあればよいのですが、暗闇の中ではうまく見つかりませんでした。流木を細かくすることも考えましたが道具がありません。

気温は刻一刻と下がり続けます。寒さと酒の酔いで思考は冷たい泥沼と化し、もはやこれまでかと思いました。「あゆみ・・・・ごめんね・・・・」

人間は強い生き物です。もうだめかと思った時ほど起死回生の突破口が開きます。一発逆転です。

今までは真冬でもサンダルで過ごしていました。南国ですから。

しかしその日、天の啓示があったのかもしれません。たまたまスニーカーを履いていました。

なんという僥倖! 

僕の足と靴の間には焚きつけに最適な物があるではありませんか!

靴下です!

すぐに靴下を脱ぎました。靴下をコンクリートに横たわらせ、その上に薪を組みました。念のため片方は残しておきました。途中で火力が衰えてきた場合ブーストをかけられるようにするためです。

靴下にライターで火を点けると一瞬で炎が立ち上がりました。炎は瞬く間に上に組んだ薪を包み込み、巨大な炉となって僕の身体を赤々と照らしました。

「あったかい・・・」

文明の曙です。

焚火の隣で横になり夜空を見上げると、満点の星空が頭上に広がっていました。

今まで見たことが無いほど綺麗な星空でした。

この瞬間、僕はこの世のあらゆるしがらみから解き放たれた気がしました。そこには情報もテクノロジーも無く、あるのは星と生命の純粋な息吹でした。

柔らかい炎が身体をほぐし、幾億の星々の明かりに身をさらしていると、やがて穏やかな睡魔が空っぽの頭を満たしていきました。

静かな波の音が眠りに拍車をかけ、僕は深く暖かい沼の底に身を沈めていきました。

翌朝ラジオ体操の音で目が覚めました。すぐ近くで知らないおばさんがラジオ体操をしていました。

僕は二日酔いの重い頭を奮い起こし、立ち上がりました。

そしてゆっくりと歩きだしました。

この時の僕は、プレデターのラストシーンで煙幕の中から姿を現すダッチ少佐の気分でした。

そして思いました。すべては繋がっているのだと。

不動産屋に家を開けてもらい、暖かいシャワーを浴びて布団でよこになると、すぐに歩が身体を寄せてきました。そして小さなくしゃみを一つしました。

僕の身体に残った、炭の匂いのせいだったのかもしれません。



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パソコン初心者の方からでも見学・体験を行っております。

『やってみようかな』と興味を持たれた方、気軽に是非覗いてみて下さい。

石垣市大川の源ビル1階。赤いノボリが目印です!

皆様のお越しをスタッフ一同お待ちしております。

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ガルヒ就労支援サ―ビス合同会社

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